2017年4月28日金曜日

Gary King先生が傾向スコアマッチングの使用に警鐘

ハーバードのKing先生(Google Scholar)とMITのNielsen先生が,因果推論においてセレクション・バイアスへの対処法として重宝されている傾向スコアマッチング propensity score matching を用いるべきでない理由をWP化.

曰く,PSマッチングを使っても,実際にはうまくバランスしないことが多く(imbalance),非効率的で(inefficiency),モデルに依存し(model dependence),バイアスまでも増加するという PSM paradox が生じているとか.といっても傾向スコアのマッチング以外の利用(回帰調整や層別化など)を否定しているわけではなく,あくまでもマッチング法への利用が批判の対象となっている.

(追記)詳細はanalyticalsociologyさんのブログポスト「King and Nielsen (WP 2016) なぜ傾向スコアをマッチングに使うべきでないのか?」(2017年9月)を参照されたい.

2015年7月にはスライドが,同年9月には動画(International Methods Colloquium)が公開されている.



Twitter言及の例(追記:ドープネスさんは2017年8月下旬にアカウント凍結となったようです.すぐに別アカを開設されたようですが.):

大学教員の「質」が指導学生の業績に与える影響

北大の菊池先生と慶應の中嶋先生による.(ポテンシャルの高い)学生が(優れた)教員を選択するという内生性に対処するために指導教員の定年退職・異動・死亡を利用している(Rivkin et al., 2005 ECTA 参照).
上記『~潮流』版ではエピグラフとして,ノーベル賞を取るのに優れた師の重要性を主張するSamuelsonの発言を引用している(Samuelson自身のノーベル賞受賞スピーチでも同様の発言が確認できる).研究を通じた人材育成というフンボルト理念は近代的大学の端緒でもある.中嶋先生らは東大理学部物理学科で修士・博士を取得した研究者の業績データを利用し,これが教員による研究指導の質の影響を受けることを実証的に明らかにしている.離職が無作為でない可能性を考慮したPSマッチングやplacebo testなども行われている.

(感想)優れたジャーナルに論文を通せるようなコネのある先生の指導学生には七光り的効果が生じているという可能性の扱いと解釈についても興味がある.

(蛇足)『~潮流』版ではsample sizeの意味で「標本数」という語が用いられている(たとえば p. 97).サンプルサイズ警察はエコン界隈には少ないのかもしれない.またstandard errorの意味で「標準偏差」という語が用いられている箇所も確認できる(表3-2,表3-3).