2017年3月28日火曜日

住宅の供給弾力性とレント・エクストラクション

スタンフォード大のDiamond先生によるレント・エクストラクション研究.住宅の研究で「rent」という語が出てくるのでややこしいが,賃料の意味ではないことに注意.空間均衡モデルを利用して,住宅供給の弾力性が低いと,増税を通じて州や地方自治体がレント・エクストラクションを行いやすくなり,このレントは公共セクターの労働者(教員,警察,消防士など)に吸い上げられるとのこと.

レント・エクストラクション(rent extraction)という用語はどうも多義的に用いられているようだが(分野固有?),概ね「生産性の向上ではない(本来的には望ましくない)方法によって利益を増大させようとする(行為)」ということらしい.たとえば,政府は増税によって,民間企業は複雑怪奇な租税回避によって,過剰なまでに自己利益を追求することを指すこともあるよう(see Chen et al., 2010 JFE).(解釈が間違っていそうなので一旦取り消し)「レント獲得」と訳出している例も確認できる(兒玉,2015 IMES DP).井堀(2009,Ch. 4)によれば「レントとは,経済的資源の所有者に対して,その資源の社会的に見て妥当な報酬以上の支払いがなされることを指す言葉」で,参入規制によって企業が得る独占利潤や,政治家が政治活動によって得た独占情報によって私的な利益を得ることがレント(=うまみ)と呼ばれる.このような規制による特別の利益や利権,既得権を得るための行動はレント・シーキング rent-seeking と呼ばれる.

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